「解雇特区」導入?

 

国家戦略特区という制度の導入が検討されていますね。しばしばニュースでも採り上げられています。

 

「労働特区」導入方針を確認 首相と関係閣僚が協議

 

 

 安倍晋三首相は16日、地域を限定して規制緩和する「国家戦略特区」をめぐって関係閣僚と協議し、政府内の調整が難航している「労働特区」を導入する方針を確認した。今後、特区の詳細を詰め、来月上旬に関連法案を閣議決定して臨時国会に提出することを目指している。

 

 民間委員で構成する特区の作業部会は、労働特区での規制緩和策として、労使の契約で解雇ルールを明確にしておく制度や、有期雇用制度の特例の導入などを求めた。これに対し厚生労働省は「労働関連の規制緩和は特区にはなじまない」と反対していた。

 

47NEWSより引用)

 

 

国家戦略特区導入の是非はとりあえず横に置いておいて、社会保険労務士試験の勉強をされている方は、解雇についてはどのようなルールが定められているか、思い出してみて下さい。

 

 

まず、そもそも解雇できるかどうかについて定めている条文は、労働契約法16条ですね。労働契約法は「労務管理その他の労働に関する一般常識」において出題される法律ですので、試験範囲に含まれます。近年は毎年のように出題されるので、手抜きはできない法律です。改正もありましたし、今後もマークすべき法律です。

 

解雇についてですが、使用者が解雇の意思表示をしても、必ずしも解雇できるとは限りません。「客観的に合理的な理由」があり、かつ「社会通念上相当」な場合でなければ、解雇権を濫用したものとして解雇は無効となります。

 

この条文は、労働者保護のために設けられた条文です。もともと条文は存在せず、判例によって「解雇権濫用法理」が確立していたのですが、その後労働基準法18条の2に明文として定められ、その後さらに労働契約法の成立とともに条文も労働契約法に移動してきました。

 

 

 

会社を解雇された…でも。

(会社をクビになってしまった…でも、それって正当な解雇ですか?)

 

 

 

また労働基準法では、解雇については19条、20条、21条に定められています。仮に解雇が労働契約法16条に違反しない正当な解雇であっても、なお労基法19条の解雇制限や、20条の解雇予告や解雇予告手当が必要となります。ただし、20条1項ただし書や21条の場合は解雇予告等は不要でしたね。あわせてチェックしておくとよいでしょう。

 

 

労働基準法や労働契約法を勉強していると、「解雇特区」の導入については若干の違和感を感じてしまいます。実際、社会保険労務士試験を管轄している厚生労働省は導入に反対しているようですし。

 

もちろん、解雇しやすくすることによって雇用の流動化が促され、雇用しやすくなるというメリットもあるのかもしれません。メリットとデメリットをしっかりと考慮しながら、導入の是非については慎重に議論してもらいたいところですね。